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　僕が彼女の写真を撮影したのは、彼女のお母さんから頼まれたからでした。
その時僕には、まだ撮影スタジオを持っていなく、自宅の部屋に黒バック用の布をセットし、ライトは500ワットの写真用ライトを2灯使っての撮影でした。

その時、彼女は確か中学生だったと思います。
生真面目なまなざしが印象的で、200カットほど撮影しましたが、笑った写真は1枚だけだったのです。
　撮影した写真の中の1枚を半切という大きさの白黒パネルにつくって渡しました。
お母さんが大変喜んでくれたと覚えています。

小学生や中学生の女の子のホートレートを撮影するというのは、以外と難しいものです。今の都会のコギャルと呼ばれている女の子ではなく、20年前の地方都市の少女なのです。そのシャイさはなかなかのものでした。
さらにプロのカメラマンがごっついカメラを構え、ライトをつけての撮影です。普段だったら1枚シャッターを押せば終わりですが、僕はモータードライブという連写機能を使った撮影です。
カシャーン、カシャーンという派手なシャッター音と、「笑って、笑って」と絶え間なく話す僕。
そして部屋の隅ではお母さんが、そんな撮影風景を珍しそうに見つめているのです。
彼女は、ますます堅くなり、身体を動かすのも、やっとという状況です。
そんな緊張の中で撮影した写真です。
彼女の硬質な少女らしい美しさが写っていると思います。

もう20年も前の事です。

撮影データ　フィルム・トライＸ(B&W) カメラ CANON F-1

撮影・文
竹村倉二

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