異説か真実か! 不思議な童唄の真実。NO.4 |
悪魔の竜 でんでらりゅうの謎!! |
不思議な歌が長崎にある。 デンデラリュウが出てくるばってん デンデラリュウが出てこんけん こんこられんけん こられられんけん こーんこん わらべ歌である。僕自身も子供のころに何度か口ずさんだことがある。不思議な歌詞と、調子のいいメロディーが耳のそこにこびりつくようで、忘れられない。新しい歌かと思ったらそうではないらしい。この歌のことを調べてみると、起源が明確でないとのことである。長崎を中心に九州地方に流行、それぞれの方言でアレンジされて歌い継がれ全国に広まり、小学校の音楽の教材にも取り上げられているとのことである。これに目をつけてキングレコードが、現代風の詞と音楽をつけて昭和52年にレコードを出している。ちなみに前田良一氏の作詞作曲・歌とある。それにしても、デンデラリュウという言葉が妙に耳に残るのだ。 ある時、柳田国男の「遠野物語」という本を読んでいた。 266.青笹村の字糠前と字凡内時の境のあたりをデンデラ野またはデンデエラ野と呼んでいる。(中略)すなわち死ぬのが男ならば、デンデラ野を夜中に馬を引いて山歌を歌ったり、または馬の鳴輪の音をさせて通る。(中略)こうして夜更けにデンデラ野を通った人があると、喜平どんの家では、ああ今度は某が死ぬぞなどといっているうちに、間もなくその人が死ぬのだといわれている。 デンデラ野という場所の印象は、冥界の入口というイメージがする。デンデラという言葉は、この世とあの世の間かもしれない。そう考えても間違いはない。ただ、デンデラという言葉の意味が不明である。童唄のデンデラリュウと遠野のデンデラには、共通項があるような気がしてならない。だが、長崎と岩手県の遠野では、距離的にはなれ過ぎている。かたや雪国である。文化の共通性をまずは捜さなくては話が始まらないであろう。 遠野というところは東北の山深い盆地にある。東北という土地は、田舎というイメージがあるが、平泉の藤原氏が繁栄していた地域で、黄金の産地であった。遠野は、明治になるまで、尾根づたいか、峠越えの道しかなかったが、この道は、古代から東西南北の商業、交通の要衝であったため、商人、漁師、山師、僧、山伏、旅芸人などが交流し、各地の産物、信仰、伝承、民話、民謡、などが伝わったとされている。いわいる文化の吹き溜り的な性格を有している。そして、たくさんの民話が残っている。言うなれば、日本の民話の見本市みたいな場所であった。であるから、長崎の民話にも、遠野の話がルーツになっているものがたくさんある。 遠野の「でんでら野」が霊的な場所を示す以上、長崎の「デンデラ」が 同じ意味合いがあると解釈しても間違いではないだろう。そして、「リュウ」は、竜としか解釈が出来ない。それは、歌の内容が『生き物』を指し示しているからだ。 「でんでら」というのが、死者に関連がある言葉なら、例えば冥界に住んでいる竜という解釈が成り立つ。デンデラリュウが、冥界に住む竜という事であれば、出てこなくなった事を喜ぶ気持ちもわかる。そして、「冥界の竜を封じ込めた」というふうに解釈した方が自然である。 英語でdenというと(野獣のすむ)穴、(悪者の)巣くつ(こぢんまりした)私室のことをいう。危険はdangerous(デンジャラス)。demon(デーモン)とは悪魔のことである。日本語の「でん」は電と書き、稲妻のことを言う。竜と稲妻はワンセットで書かれる。すべてのベクトルが悪魔の竜を差し示している。 イラスト ・ 文・竹村倉二 ▽資料・引用…長崎辞典 歴史編 長崎文献社 風俗文化編 長崎文献社 遠野物語 柳田国男 角川文庫 遠野物語考- 高橋喜平 創樹社 遠野の昔話- 佐々木喜善 宝文館出版 |
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